保守党は西部を基盤にしており、ケベック州とは歴史的に敵対してきた。今回総選挙でも、保守党の支持率が全国的に高くてもケベックに浸透するのは容易でないことが示された。また保守党はもっぱら地方で支持されており、大都市MTV(モントリオール・トロント・バンクーバー)では支持されていない。今回獲得した143議席は、保守党が獲れる限界を示しているのではないだろうか。
議席の4分の1を占めるケベックで、ケベック連合が一定の議席を占める限り、何回選挙をやっても過半数は獲れそうにない。安定政権を樹立できるのは、ケベックで勝てる党だけである。となると、ケベック連合はケベック州だけの党だから、自由党以外ないと結論づけざるを得ない。
2006年総選挙で保守党は124議席を獲得したが、議席率40%は史上最小政権であった。いっぽう最大野党自由党は103議席もあったのに、弱い保守党政権を延命させたのは、ディオン党首に人気がなく、解散に追い込んでも選挙に勝てる自信がなかったからである。だがディオン党首はまもなく辞任するだろう。より強いリーダーを据えた自由党に、同じ手は通用するだろうか。自由党は、人気のない党首に引導を渡せただけ得をしたかもしれないのだ。
今や自由党はこれ以上議席を減らす心配がなく、むしろ保守党が減らす心配をしなければならないだろう。引き続き少数政権を余儀なくされたハーパー首相は、果たして解散カードを切れるのだろうか。1年以内の解散・総選挙に、総督は勅許を与えないだろう。「少数与党では運営できないので解散したい」などと首相が言おうものなら、「解散して過半数獲れる見込みはあるのか」と言われかねない。逆に「少数与党で運営できないなら辞職しなさい」と言質を取られ、野党3党首を総督官邸に呼び、左派連合政権に組閣を命じるだろう。ハーパー首相は今回切り札の解散カードを切ってしまい、それでいて過半数を達成できなかったため、当分の間解散カードを封じ込められ、かえって窮地に陥る可能性がある。自由党はこれ以上落ちるところがないところまで落ち、怖いもの無しである。
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