今度デジタルカメラで写真を撮り、それをFacebookに掲載するとき、あなたはノーベル賞を受賞した3人の男に感謝することになるだろう。
スウェーデン王立科学アカデミーは10月6日、ノーベル物理学賞をチャールズ・カオ博士(イギリス・アメリカ国籍)、ウィラード・ボイル博士(カナダ・アメリカ国籍)、ジョージ・スミス博士(アメリカ国籍)に授与すると発表した。授賞理由は、カオ博士が光ファイバーによる情報通信への貢献、ボイル・スミス両博士がCCD(電荷結合素子)センサーの発明で、今日のネットワーク社会の基礎を築いたことが評価された。賞金の1000万スウェーデン・クローナ(約1億3200万円)の半額をカオ博士、4分の1ずつをボイル・スミス両博士が分け合うことになる。
カナダのノーベル賞獲得は、これで13個目(12人と1団体)となる。ボイル博士は1924年、ノバスコシア州アマーストで生まれた。
14歳まで学校に通わず、家で母に教育された。その後ローワーカナダ・カレッジとマギル大学で学び、第二次大戦中の1943年には学業を中断してカナダ海軍に入り、スピットファイアーを操縦した。
1953 年ベル研究所に入り、1969年スミス博士とともにCCDを発明した。これはアインシュタインが解明した「光電効果」を応用し、物体がどう見えるかという光の情報を電気信号に置き換える技術で、現在はデジタルカメラや望遠鏡、医療用内視鏡などに広く使われている。
ボイル博士はインタビューで「このごろ、至るところで誰もがデジタル・カメラを使っているのを見るにつけ、スミス博士との研究が与えた影響の大きさを思わずにはいられない」と語った。最も印象的な出来事は、デジタルカメラによる火星から地球への画像伝送だったという。
カオ博士は、細いガラス繊維で光を伝送する「光ファイバー」の理論的研究に取り組んだ。当時の光ファイバーはわずか20メートルしか信号を送れず、多くの研究者が伝送方法の改良に取り組む中、カオ博士は1966年、繊維の不純物を限界まで減らすことで100キロ以上の通信が可能だと推計した。
カオ博士と同じイギリスの研究所で働いていたリチャード・エップワース氏は、「車輪が輸送において成したことを、光ファイバーが情報通信において成し遂げた」とコメントした。
王立科学アカデミーは、カオ博士に先立つ基礎研究の一つとして西澤潤一(元東北大学長)の業績にも触れた。西澤さんは20代から30代にかけて、光通信の3要素(半導体レーザー・光ファイバー・受光素子)を考案し、「光通信の父」と呼ばれた。特に、世界最大の学会である米電気電子学会(IEEE)は彼の業績をたたえ、ニシザワ・ジュンイチ賞を創設している。
西澤さんが所長を務めていた東北大電気通信研究所の矢野雅文所長は、「カオ博士より西澤先生の方が早く業績を上げ、国際的にも認められている。ノーベル賞の選考委員会の評価の仕方が違うのだろうか。ものすごく残念の一言に尽きる」と語った。いっぽう西澤さんは「基本的なことは我々が成し遂げた。おめでとうと言いたい」とコメントした。
写真:左からチャールズ・カオ、ウィラード・ボイル、ジョージ・スミス。
2009年10月07日
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