
ブリティッシュコロンビア州が会場になるため、地元出身者こそふさわしいという意見には説得力がある。ベティ・フォックスは、コキットラムでテリーを育てた。
車椅子バスケットボールでテリーのチームメイトであり、1987年車椅子で世界一周旅行を成し遂げたリック・ハンセンは、しばしば第一候補に挙げられた。彼はブリティッシュコロンビア州ポート・アルバーニ出身で、何人かはベティとハンセンがともに最終ランナーになるべきだと主張した。ところがハンセンは、開会式の3日前にリッチモンドで聖火ランナーを務めることが発表され、彼の可能性は消えた。

ほかに人気のある候補としては、1968年グルノーブル・オリンピックで金メダリストを獲得した、ブリティッシュコロンビア州ロスランド出身のナンシー・グリーン・レイン上院議員がいる。だが彼女はすでにカムループスで聖火ランナーを務めたため、彼女の可能性も薄い。
元バンクーバー・カナックスのトレバー・リンデンも、バンクーバライツの間で人気が高い。彼は1998年長野オリンピックに出場しているが、メダル獲得はなく、国際的知名度に劣る。彼はおそらく最終ランナーではなく、バンクーバーのどこかの地点を走ることになるだろう。
グローブ&メイル紙のコラムニスト、ゲイリー・メイソンはオンタリオ州ブラントフォード出身のウェイン・グレツキーを挙げる。

なお筆者は、パラリンピック4大会で14個のメダルを獲得したシャンタル・プチクレールを推している。
写真上:テリー・フォックス。
写真中:リック・ハンセン。
写真下:シャンタル・プチクレール。
12日に行われるバンクーバー五輪開会式の聖火点火者について、カナダのメディアは、様々な予想を行っている。
本命に挙げられているのは、アイスホッケーの元スーパースター、ウェイン・グレツキーさん(49)だ。
カナダの国技とも言われるアイスホッケー。グレツキーさんは、北米アイスホッケーリーグ(NHL)で、MVPを史上最多の9度受賞し、通算最多得点など61の記録を樹立、「ザ・グレート・ワン(偉大なる男)」と呼ばれる別格な存在だ。
五輪には、NHL選手の出場が初めて解禁された1998年の長野大会に出場。2002年のソルトレーク大会では、総監督として、金メダルを50年ぶりにカナダにもたらした。カナダの「グローブ・アンド・メール」紙は、「グレツキーほど象徴的な選手は国内にいない。その名前は国際的なブランドだ」とする。
ただ、過去にカナダで行われた五輪では、有名なスポーツ選手ではなく、象徴的な一般人が起用されている。1976年のモントリオール夏季大会では、十代の男女が点火した。一人はフランス語圏、もう一人は英語圏を代表し、二つの文化圏の融合を表した。88年のカルガリー冬季大会では、五輪を目指す12歳の少女フィギュアスケーターが務めた。
この線から対抗に挙げられているのは、骨肉腫のため右足を切断した後、がん研究資金を集めるため、「希望のマラソン」を行ったテリー・フォックスさんの母、ベティーさんだ。テリーさんは1980年、カナダの東海岸から西海岸のバンクーバー島を目指して、毎日フルマラソンと同じ距離を走ったが、がんの転移のため、143日目に途中で断念し、翌年に22歳で他界した。同紙は「(この選択は)世界に反響を呼び起こすだろう」としている。
このほか、アジア系の移民や先住民族と共生するバンクーバーならではの選択肢も考えられそうだ。(若水浩)
(2010年2月9日14時20分 読売新聞)