アントウェルペンのノートルダム大寺院は、日本人の多くが涙しベルギー人の多くが不快感を抱く「フランダースの犬」の舞台である。ここには、ネロが死ぬ前に一目見たかったルーベンスの「キリストの昇架」と「キリストの降架」がある。
ウィーダの原作ではネロは15歳であり、本来なら働いている年齢である。彼は画家として大成することを夢見て、仕事を怠け絵を描いていた。コンクールで入賞したら皆を見返してやろうと目論んでいたが、手違いから受賞できず、最後は芸術に殉ずる形で教会でのたれ死にを遂げる。
それを日本アニメ版「フランダースの犬」では、主人公を10歳の少年として描いた。それゆえ主人公の純真さが強調され、より悲劇的な最期となったが、身寄りのない10歳の少年を見捨てた薄情な人々として描かれたフランダースの人々は、この作品に不快感を抱くようになった。
写真上:ノートルダム大寺院。
写真中:ルーベンス作「キリストの昇架」。
写真下:ルーベンス作「キリストの降架」。