2019年04月20日

6人いた女性首相、ゼロに

 アルバータ州議会総選挙で、与党新民主党が敗北し、レイチェル・ノトリー首相の退陣が決まった。これで、2013年には13行政区に6人いた女性首相は、一人もいなくなることになる。その6人とは、ブリティッシュコロンビア州のクリスティ・クラーク首相、アルバータ州のアリソン・レッドフォード首相、オンタリオ州のキャスリン・ウィン首相、ケベック州のポリーヌ・マロワ首相、ニューファンドランド&ラブラドル州のキャシー・ダンダーデイル首相、ヌナブート準州のエバ・アーリアク首相である。

 オタワ大学で政治学を教えるジュヌビーブ・テリエ教授は、これらの女性リーダーたちも他の女性たちと同様に「ガラスの崖」の犠牲になったと指摘する。
 男性が女性を辛辣に批判し、陥れることには強い抵抗がある。そこで党内で対立が深刻化し、分裂の危機に瀕するとき、女性をリーダーに立てることによって党執行部を保護し、団結と一致をアピールすることで党内抗争を回避しようとする知恵が働くのだという。
 テリエ教授は、カナダの女性党首たちのほとんどはそのような理由でリーダーになったと指摘した。そして女性首相たちの大多数は、野党党首が総選挙勝利によってではなく、首相である与党党首が辞任し権力危機が発生したときに誕生している。前者の例はマロワとノトリーであり、後者の例はクラーク、レッドフォード、ウィン、ダンダーデイルと、唯一の連邦首相であるキム・キャンベルである。
 彼女たちの全員が、与党党首として最初の総選挙に挑んだ。何人かは敗れて退陣し、何人かは勝利して留任した。留任したうちのほとんどはさらに次の総選挙に挑んだが、クラークを除く全員が敗北した(クラークは選挙後に辞職を拒否したため、内閣不信任され辞職)。テリエ教授は、女性リーダーには調和と包容力ばかりが求められているため、党内が安定し政権が長期化すると、今度は決断力の不足を批判されるのだという。
 ウィン前首相は、女性首相が増えるにつれ首相会議には、先住民女性の失踪や暴力などそれまでとは異なった議題がのぼるようになったが、やがて女性首相たちが減るにつれ、それらの議論は形式化・儀礼化していったと述懐する。彼女は、人口の半数を占める人々が代表されなくなった今、それほど遠い昔でない時代には半数近くを代表していたことを思い出し、それを取り戻すために戦い続ける必要があると訴えた。
 ノトリー首相も選挙後の演説で、同様のことを訴えた。
「それはしばしば、前に2歩前進したあと後ろへ1歩後退したように感じられるかもしれない。だが前に進むのを、絶対に止めてはならない。」


【参照】 https://canadianhistor.blog.so-net.ne.jp/2011-10-13
posted by 高橋 幸二 at 13:52| Comment(0) | 人権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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