CBCが9月27日に発表した政党支持率調査は、保守党33.9%、自由党33.7%、新民主党13.9%、緑の党10.1%、ケベック連合4.9%、人民党2.8%、その他0.6%という結果となった。ここから導き出される予想獲得議席は、自由党162(106~219)、保守党139(97~182)、新民主党17(1~44)、ケベック連合15(4~34)、緑の党4(1~7)、人民党1(0~1)、その他0(0~1)(定数338議席、括弧内は最小と最大議席)となる。
トルドー首相が、過去に顔を黒く塗った「ブラックフェイス」問題で謝罪に追い込まれたが、支持率に大きな影響はなく、自由党は依然として支持率では劣っているものの最多の議席を獲得しそうで、CBCはその勝率を64%としている。人民党は、ベルニエ党首が議席を獲得できそうだ。
政策的には近いとされる新民主党と緑の党は、激しい3位争いを繰り広げている。両党は候補者の奪い合いから、党首どうしの激しい非難合戦をひき起こした。そして争いは今、どの党も単独過半数に満たない可能性が高い現状において、どの党といかなる条件で連立を組むかという新たなステージに移行している。
緑の党のメイ党首は7月、気候温暖化への対策を取るならどの党でも支援すると述べ、9月25日には「パイプライン延伸を推進するなら支援しない」と断言した。いっぽうシン党首は、保守党のシーア党首が2005年に同性婚を非難した映像を見て「シーア党首を総理の座に就けてはならないと、強く確信する。それが正しいと信じるメイ党首とは異なり」と語った。
メイ党首はあえて保守党を除外しないことで、幅広い選択肢を保持したように見えるが、実際には自由党と保守党のどちらが政権に就いても、パイプライン延伸を覆すことは難しい。いっぽうシン党首が「パイプライン延伸に反対する州に、それを押し付けることはしない」と述べたのは、自党はあくまでも反対するポーズを維持するが、与党による押し付けは黙認する道を残したようにも思える。彼は「少数政権を支える条件として、比例代表制の導入を求める」とも述べたが、選挙制度改革はすでに一度断念しており、トルドー氏が首相の場合は難しいだろう。
重要なことは、どの党も過半数に達しないことが確定したわけではないということである。いずれかの党が単独過半数になれば、新民主党と緑の党による連立公約合戦は空手形に終わる。さらに政権与党が過半数に達しない場合、過半数に必要な議席を両党が持っていなければ、パートナーになることはできない。
緑の党の予想議席は4で、最大でも7しかない。緑の党がパートナーになれるのは、政権与党の不足議席が1~4の場合に限られ、可能性としては低い。新民主党なら、予想議席は17、最大で44あり、パートナーになれる可能性はありそうだ。
新民主党と緑の党の論争は、表向きは連立パートナーになるための条件闘争だが、実際には左派有権者の争奪戦だから、連立するための条件が自由党もしくは保守党にとって受諾可能かどうかは、問題の本質ではないのだろう。CBCは、両党があまりに無理難題ばかり言うので「犬が尾を振ることはあっても、尾が犬を振ることはあるのか」と報じた。
新民主党と緑の党がオンタリオとブリティッシュコロンビアで激戦を展開し、無理難題合戦を繰り広げているとき、ケベックだけに候補を立てているケベック連合が十数議席を獲得することが見込まれている。ケベック独立派である同党との提携は、禁じ手とされてきた。だがハーパー政権の1期目は、少数政権だったにもかかわらず案件ごとに提携相手を変える「パーシャル連立」で乗り切り、予算案もケベック連合の合意を得て成立させた。
自由党と保守党のどちらが政権与党になっても、提携パートナーとして3党のうちよりよい条件の党と組むという選択肢を、保持することができる。
2019年09月28日
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