トルドー内閣閣僚で、立候補したのは彼女だけだった。院内総務の任務は議会対策で、停会中は仕事はなさそうだが、彼女は辞職するという。
出馬を予想されていたジョリー外務大臣とシャンパーニュ イノベーション・科学・産業大臣は、トランプ対策に集中するため出馬しなかった。そのため今回はフランコフォンの立候補者はなく、フランコフォンとアングロフォンが交互に党首に就くジンクスは、今回も踏襲される。なおトランプ大統領は20日に就任したが、初日はカナダとメキシコに報復関税を課さなかった。
フリーランド前副首相は、自由党とは思えないいささか愛国的な動画を掲載した。彼女はトランプ氏の脅威をむしろ利用し、彼に嫌われていることすらアピールする。
「皆さんに知ってほしい秘密があります。ドナルド・トランプは、私があまり好きではありません。」
孤立主義を志向し、NAFTA(北米自由貿易協定)から脱退したトランプ大統領に対し、新しい貿易協定USMCAを締結し三国による自由貿易体制を堅持したフリーランド氏を、彼は嫌っていたという。彼女が閣僚を辞任したとき、彼はXに「彼女のふるまいは全体的に有害で、カナダの不幸な市民によい取引をする助けには全くならなかった。彼女が惜しまれることはない」と綴った。
フリーランド氏は動画で、こう続ける。
「我々は、誇り高い国です。強くて自由な、真の北国(The true north, strong and free/カナダ国歌の歌詞より引用)。戦うに価する国。」
動画では背景に、義足を着けて走るテリー・フォックスの映像が映る。
「トランプは我々が売りに出されていると思っていますが、彼は自分のものでないものを取ることはできません。」
それから、保守党のポワリエーブル党首を批判した。
「彼は屈服し、それから我々を売り払うでしょう。彼がドナルド・トランプに立ち向かうことはありません。彼は、ダニエル・スミス(アルバータ州首相)にさえ立ち向かうことはできません。」
本命視されるフリーランド氏とカーニー氏の両方が、物価高を招き悪評高い炭素税の廃止を主張している。だがトルドー政権のナンバー2を占め、4年以上財務大臣の地位にあった彼女には責任があり、トルドー首相の政策を否定しきれるのかどうかには、異論もある。
保守党は、フリーランド氏を非難する声明を発表した。
「全体を通して、クリスティア・フリーランドはトルドーの右腕であった。」
「彼女が財務大臣として擁護した『高くつく政治的ギミック』について、今さら手の平を返したところで、誰も騙されない。」
ジョリー外務大臣は19日、マーク・カーニー氏支持を表明した。
「カナダ銀行とイングランド銀行の総裁を務めた彼は、他に類のない経済経験を持って来る。」
「2008年の世界的経済危機とブレグジットを含め、危機の時代に、全ての政府はマークに注目する。」
カーニー氏は、これまでのトルドー政権は「支出は多いが投資は少ない」と批判した。ジョリー氏は、カーニー氏の主張する緊縮財政を「基本的だ」と評価した。
ケベックに強い基盤を持つジョリー氏の支持表明により、カーニー氏は1馬身抜きん出た感がある。
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